研究報告

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    福島支援

    2011年3月11日に発生した東北地方太平洋地震を契機とする地震災害、津波災害、そして東京電力福島第一原子力発電所事故は、岩手、宮城、福島を中心に、大きな被害をもたらしました。
    現在でも、約30万人が自宅を離れた避難生活を余儀なくされています。とりわけ、30万人の約半数にあたる15万人が福島県民で、その3分の1にあたる約5万人は、避難指示を受けていないにもかかわらず自身の判断に基づいて避難を続ける「自主避難者」です。原発事故の影響の甚大さを痛感させられます。
    最近までの環境放射線量の測定や調査の結果からは、村民ら、福島県民の被ばく量、特に内部被ばく量は当初危惧されたようなレベルではないことが明らかになっています。しかし、低線量被ばくの問題は住民に大きな心理的影響を与えており、放射線被ばく以外の経済的、社会的諸要因も住民の意思決定に大きく関与していると考えられます。低線量被ばくや避難自体による健康影響などの情報は、それを取り巻く文脈や受け手の状態など、さまざまな環境によって、意味が変化します。「科学的正しさ」がどのような文脈と環境でどのような「意味」に変容するのか、科学コミュニケーションやリスクコミュニケーションを円滑に進める為の系統だった研究例はきわめて少なく、重要な課題であると言えます。そこで、私たちは、大規模原発事故後の望ましいリスクコミュニケーションのあり方を求めるため、福島県住民の地域住民(とりわけ飯館村民)を対象に、地域住民に根ざしたリスクコミュニケーションの実践活動を軸に、低線量被ばくに関する科学的情報が受け取られる際の文脈を解明することを目的に、これまでさまざまな活動を行って参りました。
    ここでは、これまでの活動の成果を報告しています。